2015年3月3日火曜日

「食を通じて地域社会に貢献する」って・・・何?

 「食を通じて地域社会に貢献する」・・この言葉、食品メーカーや食品流通小売業の社是としてよく見かける言葉です。他にも「品質の良い物をお値打ちに・・」「地域の健康を支える・・」「安心安全」「生活応援」等々。

すべてとても良いことですよね。でも一般的に企業の目的はまず売上と利益の追求が最重要だということを私たちはなんとなくわかっています。前職で食品スーパーに20年勤務していたころ、大変お世話になった常務の口癖は「売れるものが正しい」でした。顧客満足を長年追求してきた人の言葉です。当時、顧客のニーズに応えるということは「ほしいものが、買いたい値段で、買いたいだけある」ということでした。当時特売品でよく売れていたものを思い出すと、コーラ類、ポテトチップス、グルタミン酸ソーダ系の粉末だし(化学調味料)、マーガリン、いつまでも固くならない大手メーカーの食パン、大手メーカーのカレー・ルー、冷凍食品、そしてデリカテッセン(惣菜類)です。「正しい」はずの食品は私にとって「ほんとに正しいの?」というものばかりでした。

 この10年ほどで食に関する日本人の意識は大きく変化したように感じます。そのきっかけは、名古屋、大阪を舞台とした牛肉の食品偽装、大阪の老舗高級料亭の食品偽装、まだまだ記憶に新しい大手ホテルの食品偽装、最近では輸入食材の毒物混入、海外食品工場のずさんな衛生管理などなど。安心安全ってそこそこのお金を出しても意外と買えないものなんだーと私たちは思い知らされました。日本の家庭に目をやると、女性(母親)の社会進出を実現するため?の時短レシピはネットでもてはやされているようですし、もともと食品の自給率が極端に低い日本では低所得者は、汚かろうが毒入りだろうが輸入食品を買わざるをえないという現実があります。核家族化が進んだことで出汁の取り方や煮物の作り方など、日本の伝統的な家内料理法の親から子への伝達が途絶えてしまったということも大きな変化だと思います。

毎朝4時ころに目が覚めてネットサーフィンしていると、自分とは無縁なグルメ情報があふれかえっています。このネットの情報をうのみにすれば、日本という国は自前の食材もないくせに世界で一番ぜいたくに食を楽しんでいるかも・・と思わせられてしまいます。でも本当の食のぜいたくってなんだろうと考えると私はいつもこう思っちゃいます。「ニセモノ」でない「リアルフード」を大切な人たちと一緒に食べること。こう考えると、日本人ってGDPの低い新興国の人たちより実は貧しい食生活なんじゃないのか、なんてことも考えるんです。

 「安い」「簡単」「時短」な食品を求める人たちは今の日本では圧倒的に多いと思います。でも大切な家族の健康のために、「なんちゃって」ではなく「本当の」食品を探し求めている人たちが本当はたくさんいるということをファームの活動で実感しています。

 国内でも見つけることのできない飼育レベルの平飼い有精卵、新興国の子供たちや女性たちを搾取しないフェアトレードの有機農法による厳選したコーヒー豆、漂白小麦を使用せず保存料などの添加物やショートニング(トランス脂肪酸)ではなく自家製の葡萄天然酵母で焼き上げたパン、そして無化調(化学調味料不使用)はもちろん旬の食材で自然食を提供するレストラン・・・ファームは安心安全な「本当の食品」を生産提供している稀有な存在だと自負しています。

ひかりのさとファームの目的は「なかま」の給与アップです。けど、利益をむやみに追求することが目的ではありません。障がいをもったなかまたちの「食」という努力の賜物が地域の皆さんの健康を支え、笑顔の源になることは「ともに生きる」「ともに幸せになる」というひかりのさとの理念に合致するものと信じています。
地域の皆さんに支えられているなかまたちが地域の皆さんの健康としあわせに役立っている・・・私たちファームのなかまと職員は人知れずけっこう大それたことをしているんだなー・・と。

 「食を通じて云々・・」という言葉がウソっぽくて大嫌いだったのに、胸を張って言えるようになったファームで5年目を迎える私がいます。しあわせです。